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子育ての4S

4Sとは

近年、日本の子どもたちの身体の機能が低下していることや、発育成長が指摘されています。
その原因は証明されていませんが、以前からこのことに気付いた小児歯科医が自身の経験を元に、様々な対応をしています。
その代表的なものが、

息育(そくいく)
食育(しょくいく)
足育(そくいく)

の頭文字をとった“3S”です。
しかし、それだけでは不十分であると当院は考えています。
質の高い食、生活のためには手の育成も重要です。そこで当院では4つめの“S”として

手育(しゅいく)

も必要であると考えており、これら4つを 子育ての4S と位置づけ、その育成に取り組んでいます。
そしてこれは、全身の健康のみならず、むし歯・歯周病・歯ならび異常の予防にもつながります!

★息育

歯ならびやかみ合わせの異常にとって食育とならび重要なのが、息育です。
息育とは、正常な『鼻呼吸』を確立することを目的としています。

鼻呼吸と口呼吸

動物は、原則的に鼻で呼吸します。
食べ物は口から食べるもの、鼻から食べることはありません。
ところが、人間は鼻だけでなく、口でも呼吸ができるようになりました。
そのおかげで会話が出来るようになった、と言う利点もありますが、口はもともと呼吸のために作られたものでないことから、様々な弊害も現れました。
特に問題になるのが、アレルギーや免疫系の病気です。

口呼吸になると、何がいけないの?

口呼吸は、以下の問題との関連性が指摘されています。

・ むし歯や歯周病になりやすくなる
・ 風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなる
・ 免疫力が低下する
・ 睡眠時無呼吸をおこしやすくなる、いびきをかく
・ 姿勢が悪くなる
・ 歯ならびが悪くなる
・ かみ合わせが悪くなる(過蓋咬合・反対咬合)
・ 慢性上咽頭炎にかかりやすい
・ 独特な顔つき(アデノイド顔貌)になる
・ 目の下にクマができる

この中で特に問題になるのは、口呼吸によるあごの成長不足で、その結果 一生呼吸の問題を抱えることになります。
呼吸の問題は、将来心臓疾患など生命に関わる病気の誘因にもなり得るため、

口呼吸にならないようにするための予防

が重要です。
その予防は、生まれた時から(場合によっては妊娠期から)はじめる必要があります。

息育についてさらに詳しく知りたい方は、『正しい呼吸と姿勢』のページをご覧下さい。

息育に取り組むある歯科医師からのメッセージ

今、(一部ではありますが)歯科医師が自身の子どもを口呼吸にならないようにするために、様々な分野の勉強をしています。
香港在住の歯科医師、岡田先生もそんなお一人。
院長やスタッフが、
・名古屋での『まぁるい抱っこ講座』
・大阪での『五本指ソックスのセミナー』
・東京での『離乳食講座』
などでご一緒したのがお知り合いになったきっかけ。
そのご縁で、当院で行った管理栄養士 田中美智子先生をお招きしてのスタッフ向け『離乳食講座』にお招きし、一緒に聴講していただいたこともあります。
この岡田先生の“子育て奮闘記”を、さくら総合歯科妊婦・赤ちゃん・こども編ページのために書いていただけないか伺ったところ、快諾していただきました。
多くのお母様に知って戴きたい内容ですので、是非ご一読下さい。

香港在住の歯科医師より
(岡田先生は)東京出身の三姉妹の長女として育ちました。今は香港に住んでおります。4人の子持ちの母になりました。
男 → 男 → 女 → 男 の4人です。今は9歳・6歳・4歳・1歳になりました。まだまだ育児に奮闘しております。

むし歯対策
お口の健康について、長男には気をつけておりました。
特に、決めた時間以外は食べない、寝る前は必ず歯を磨いてから寝るという事を徹底し、3歳まで過ごしました。今までむし歯知らずです。

が、次男は、あれだけ長男に気をつけていたのに、気をつけていたことが生活の一部になっていたのか、

「なんだむし歯ってなりにくいものなんじゃない?」

と悪魔の囁き、お兄ちゃんの都合で移動しなければならない生活、つまり食事やおやつの時間が決められない、プラス次男の性格(自分で決めたい・やりたい)で今まで気をつけていたことが崩れました。
そうしたらみごとに2歳を過ぎたらむし歯ができてしまいました。そしてむし歯は1本ではないという現実。
奥歯が痛かったり、治しても形が変わり上手く噛む機能がなくなり、兄弟の中で彼だけ奥歯を使ってすりつぶすことができなくなってしまったのです。
本当に後悔しそれ以降の子どもには気をつけています。

口呼吸の問題
さらにその次男、私がいつも抱きやすいように、私の都合の良いように装着した抱っこ紐に入れて移動していたこともあり、いつも口が開いていたのです。
抱かれる姿勢によって口が開きやすくなることで、口呼吸の原因にもなってしまいました。
そして、その次男にだけアトピーと鼻炎の症状が出てしまったのです。
本当に後悔し、それ以降の子どもには気をつけています。

歯科医師として子どもたちに出来ること
日本にいた頃は、もともとはクラウン(かぶせ物)とブリッジ専門の講座に在籍していました。
その後開業医に勤務するようになり、子どもたちの口腔内に接する機会が増えました。
そして、『なんて多くの未来、可能性を持っているのか』と驚き、これは入れ歯やクラウン作っている場合ではない、子どもたちの歯を守ればもっと明るい未来になると感じたのです。
その後は子どもの矯正を手がけるようになりました。
ひと昔前までは、歯ならびは遺伝と言われていましたが、今は予防できるということがわかりました。
そこで歯ならびの予防について勉強するうちに、

大切なのは歯のはえる前の赤ちゃんの時から、そしてそのもっと前の生まれる前から気をつけておくことがある

ということがわかりました。
そう、お母さんがお母さんになる前の妊婦の時からできること(もちろん妊娠する前からでも)があるということです。

歯ならびに影響することの一つに、姿勢があります。
赤ちゃんの抱かれる姿勢、座る姿勢、寝る姿勢、立つ姿勢。
椅子や、枕、靴も大切になってくるということを学びました。


次男の症状は、それらが原因になっていることに気付き、本当に後悔し、それ以降の子どもには気をつけています。

子どもたちが、机に向かう勉強ができるようになることも大切ですし、そうなって欲しいですが、そのためには心身ともに健康であること、体を真っ直ぐにし前を向いて明るい将来を見通せる視線を持ってほしい。それが明るい子どもたちの未来を作るのではないか、と考えています。

岡田先生は、口呼吸を予防するための「息育」のみならず、「足育」にも取り組んでおられます。
そして、結果を出しておあられる貴重な存在の歯科医師・母親と言えます。

★食育

歯ならびに食育が関わっていることは、以前から認識されていました。
よく噛んで食べることは、消化にとって有利なのはもちろんのこと、血糖値の急激な上昇を抑える可能性があったり、唾液がたくさん出ることにより免疫的な効果も期待できます。(唾液には免疫に関係する成分も含まれています。)
さらに、唾液がたくさん出れば、むし歯菌の産生した酸を早く中性に戻してくれる作用も期待できます。(唾液の中に酸を中和する成分が含まれています。)

成長期によく噛むことは、あごの成長にもプラスに働きます。
よく噛んだ方があごの成長が大きいことは、ネズミの実験で証明されています。
また、人においては食事をするとき、よい姿勢で、足裏をしっかり床ににつけて食べることが、正しい嚥下(飲み込み)機能の育成にとって、極めて重要です。
したがって、よい歯ならび・かみ合わせを達成するためには、

・食事の内容
・食事の食べ方

が極めて重要なのです。

一方、むし歯や歯周病は、食事の内容や食べるタイミングの影響を大きく受けることもわかっています。
以上のように、“食育”はお口の健康を守る上で、極めて重要な意義があります。

★足育

日本人の子どもたちの多くは足に問題を抱えています。
残念ながら、日本ではこのことがあまり認識されておらず、成人になってから膝や腰を痛める要因の1つになっている、と考えられています。
そして何よりも、足の問題は姿勢に大きな影響を与えます。
悪い姿勢はかみ合わせに影響します。
なぜなら、下あごは体のバランス、特に頭のバランスをとる役目もあり、姿勢がゆがめば下あごの位置がズレ、かみ合わせがずれてしまいます。

すると共に、舌を後下方に引っ張ることにより口呼吸や歯ならび異常の原因になると考えられます。
足育の重要性については、「大切な子ども足」のページに詳しく書いてあるので、そちらをご覧下さい。

歩育

よい足を育てるためには、よい靴は必須ですが、それだけでは不十分です。
足趾には適切な『アーチ』が必要で、それが形成されはじめるのが約3歳。
それまでも、それ以降もしっかり歩くことが必要です。

歩くことは移動の手段として重要なだけではありません。
歩くことにより、子どもは多くのことを学びます。
周囲の人との交流・並ぶ・順番を守る・交通ルールなど、社会の規則を学ぶ機会にもなります。
また、安全に配慮することを身につけることにも役立ちます。

近年、ゲームの普及や治安の悪化などにより、外遊びをする時間が大きく減少しました。
したがって、保護者の方が意識的に、一緒に外で歩き・遊ぶことがお子さまの体力のみならず、健全な足の育成にもきっと役立ちます。

★手育

上記3Sに加えて重要なのが、手の発達=手育 です。
ハイハイや手づかみ食べは、実は口の機能とも関係します。

手育としてのハイハイ

ハイハイをしっかり行わないと、以下のような問題が起きます。

・ 自分の頭を持ち上げる頸の筋肉が育たない
・ 背骨の正しいカーブを作るための骨の成長ができず、筋力もアップもしない
・ 足の指が発達しない

そして、手根骨(手の関節を形成する8個の短い骨の総称)もハイハイの時に地面に対して垂直な力が刺激となってかかることにより、成長します。

ハイハイの時期が短いと、腕に力がかかる期間が短くなり、筋肉も育ちません。

手がしっかり成長しないと、その後の手を使った機能の発達にも影響することが考えられます。

手育としての手づかみ食べ

歯科医師や管理栄養士は、“手づかみ食べの重要性”を強調します。

手づかみで食べるときは必ず座ります。そして、座った状態で手という道具を使って色々な方向から口に食べ物を入れたり、脇をあけたり、肘を支点にしたり、距離感を計ってお口に運ぶまでの運動を行います。
このとき、手を運動器としても感覚器としても使っています。
手づかみ食べを行いながら、手の動き・距離感を自然に体得していきます。
つまり、複雑な動きを“食べる”という行動をしながら学んでいくのです。

また、物を掴んだときの感覚(つるん・すべる、など)を感じながら、潰れないように持つなどの感覚も覚えていきます。
さらに、一口の適切な大きさも学びます。

一口の大きさが大きすぎると、正常な飲み込みむ機能の発達に悪影響を及ぼすことがあります。

“手を使う”ということは、口の機能や食べることにとっても重要な役割があるのです。

手が使えないと

近年の子どもたちは、『筆圧が弱く、HBの鉛筆は使えない』
と言われています。
そんな子どもたちは、歯ブラシもうまく握れず、ましてや使いこなせません。
歯を守るためには、手の発育発達も重要です。


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